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DFT presents 音都 ONTO vol.5
ライブレポート 2019/8/25(日)
Coming Soon…
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DFT presents 音都 ONTO vol.4
昨年より開始したDFT(=堂島フォーラムチーム)が送る「音都」(ON TO)もいよいよVol.4。前回11月に行われたVol.3より4ヶ月を経て、今回はなんと2日間、総勢23組(MC含む)が出演する大掛かりな内容へと変化していた。
ライブレポート 2019/3/30(土)2019/3/31(日)
開催場所は、今回も堂島リバーフォーラム。「音楽シーンの流れを関西から変えていく」という壮大なコンセプトの実験場でもあるこの無料ライブイベント、やはり「継続は力なり」。ロビー開放時間が13時半という昼帯にも関わらず、前回よりも早い時間から会場を取り囲む長蛇の列ができていた。それでは平成最後、3月30、31日の土、日の二日間に亘って行われた「音都」の様子を見てみよう。
■3/30(土)「音都」一日目
前回に引き続き、今回もロビー開場13時30分、開演15時30分という設定。この2時間の空白は何かというと、実はロビー周りのそこら中に「アーティスト・ブース」という、出演者自身がブースに現れ、様々なアトラクションを繰り広げるコーナーを出店しているのだ。例えば、定番となったQyoto(キョウト)のおみくじ「Qyoみくじ」、砂糖ココアとHinawa銃の射的、dps(ディーピーエス)の「いっそLINE登録して、ガラガラ1回まわしてって〜」 etc……。この日は様々な趣向を凝らしたブースが17つ登場した。この「アーティスト・ブース」、観客にとってはステージ以外にも一日中お祭り気分で楽しめる有意義な企画となっており、一方アーティスト自身にとってもファンと交流を交わせる貴重な場となっている。ことさら新人にとっては自己紹介の場として意義深い。また、会場全体に満ちた手作り感溢れる温かい雰囲気も「音都」ならではの大きな特徴といえるだろう。
さらに、今回も会場入り口中央には出演アーティスト全員の巨大写真タペストリー、2Fには過去のライブ写真のタペストリーを展示。誰でも自由に写真撮影が可能となっており、たちまち来場者たちのSNSによって会場の様子が拡散されていった。
定刻15時30分となり、いよいよ「音都」本番がスタート! もうお馴染みとなった「音都」のコンセプトイメージ映像が流れ、その後オープニングMCは、16歳のトリリンガル(=英日中国語)アーティストのMei Mei (メイメイ)が登場し、元気いっぱいのアナウンスで会場を温めた。
そしてトップバッターは、初登場のGARL(ガール)。アヴァンギャルドなモノトーンの衣装に身を包み、いきなりドラムビートを響かせて、1曲目はなんとBOØWYの「B.BLUE」をドロップ。その後も矢継ぎ早に4曲、BOØWYの名曲をコピーで披露。ビジュアル&スタイルもそのままに、まるで30年の時を経てBOØWYが蘇ったようだ。蔵本勝希(Vo.)が語ったように、まさにBOØWYのカバーではなくトリビュート。その言葉に相応しい鮮烈なパフォーマンスを堂々と披露した。ここまでBOØWYを崇拝しているバンドは、潔くカッコ良い!
バンドの本編が終わっても演奏は途切れない。そう、これが「音都」のライブ演出の魅力の一つでもある。出演者が入れ替わる転換時にも演奏が続きながらシフトチェンジしていく様子は、オーディエンスの熱量をクールダウンさせない工夫としてなかなか興味深い。
続いては、こちらも初登場のKanna Ethnic Land (カンナ エスニックランド)。紅一点ボーカルのカンナと、パーカッション&ボーカルの向井達哉からなるユニットだ。1曲目は、異色サンタ・エスメラルダ「悲しき願い」のカバー。しかしながら、カンナのパワフルな第一声を聞けば、彼らが迫力のラテンミュージックをコンセプトにしているのが一聴瞭然である。もちろんラテンといってもラテンダンスもラテンロックも含んだ選曲。オレンジのフリンジ二ットに身を包んだカンナのド派手な存在感、パーカッション向井の個性溢れるダミ声も日本では珍しいタイプのパーソナリティーだ。最後はリッキー・マーティンの「リヴィン・ラ・ヴィダ・ロカ」を二人でカラッと熱唱してしまうそのラテン気質、灼熱の夏に向けて目が離せないニューフェイスだ。
続いて3番手は、図画泉美(Vo.)、GAK(Gt.)を中心に誰もが知るアニメソングの名曲をメタル調アレンジでカバーする謎のバンド、図画アニソンメタルバンド。前回の「音都」でもその圧巻のパフォーマンスでド肝を抜いた彼らが早くも登場。しかも今回はバンドがさらに進化! なんと元Purple StoneのギタリストGAK(ガク)を正式に迎え入れてのトリプルギターに、ドラム、ベース、4人の女性コーラス隊と豪華10人編成で華やかにステージを彩った。ライダースジャケットに真紅のミニドレス&エナメルブーツで登場した図画泉美のシャウトヴォーカルで幕を開けた「ムーンライト伝説」、続いてZARD「運命のルーレット廻して」、小松未歩「願い事ひとつだけ」を正統派ジャパメタアレンジで、さらにアニメソングのド定番とも言える「残酷な天使のテーゼ」で締めくくれば、このバンドのJ-POP界における立ち位置の革新性がどのようなものか分かるだろう。今回も圧倒的だった。
さぁそして4番手に登場は、GIZAグループのセッション・ミュージシャン集団として名高いSensation。今回から、ヴォーカリストに中村コリーを正式に迎え入れての新体制となり、お得意の超絶インストゥルメンタル・ナンバーから弱冠20歳とは信じがたいコリーの表現力豊かな歌声を生かしたスタイリッシュなナンバーをラインナップ。シャーデーのカバー、さらにオリジナル・ナンバー「甘い記憶」まで、安定の演奏とボーカルで場内を盛り上げた。
トントンと新登場、新スタイルのバンドが4組続いた後で、ここからは「音都」複数回出演組の登場だ。5番目に登場したのは、4ピースガールズバンドの砂糖ココアとHinawa銃。赤と黒を貴重とした和テイストを取り入れたロックなニュー衣装で登場し、前回に比べて格段の演奏力とパフォーマンス力を発揮。砂糖ココアのストレートな歌声と毒気を含んだ女心の歌詞の鋭い破壊力。これまでの演劇的なパフォーマンスを必要とせずとも、その存在感で人を魅きつける気迫をみなぎらせていた。まさに「Burning the soul」! 情念を燃やすライブだった。
続いて6番手は、京都出身の6ピースバンドのQyoto。デビュー18ヶ月を超えて勢いも増してきた彼らは、お得意の爽やかなナンバーに加え、新曲も披露。といつものように爽やかなスーツ姿のバンドマンで通し切るのかと思いきや、ここで「音都」ならではのスペシャル企画、前回のライブでV系のバンギャがモッシュする姿を見て感銘を受けた中園勇樹(Vo.)が、なんと-真天地開闢集団-ジグザグの命(みこと)様を招き入れ、直伝のモッシュ技法を体得。「It’s all in the game」で念願のモッシュを取り入れるという画期的なハプニングも。「真冬のダイアリー」という爽やかなナンバーで締めくくるも、内面ではスピリッツを抱えたバンドマンの姿をしっかりと見せつけてくれた。
そして7番手に登場は、こちらも「音都」常連組ハードロックバンドのdps(ディーピーエス)。前回までとは違った選曲で畳み掛けるように3曲を演奏。より凄みを増してきた森丘直樹の超絶ギターが一瞬にして会場全体を虜にしていく。木村涼介(Vo.)のMCでの煽りも堂に入ってきた。ところで、中盤部、彼らもサプライズを用意。なんと6月19日にマーティ・フリードマンも参加したEPリリースが決定。さらにその新曲「あの頃は何もわからなかった(with Marty Friedman)」を初披露。dpsにとって初のバラード調ナンバーだ。11月にメジャーデビューしてまだ4ヶ月、着実に実力を蓄えてさらなる上を目指す彼らにより興奮が高まった。
さて、ここで8番目に登場したのはメジャーデビュー5周年、ピアニストの西村広文(from アカシアオルケスタ)と二人編成で臨んだ「Lazward Piano」というツアーが終了したばかりの植田真梨恵。今日もツアー同様シンプルな二人編成でおもむろに登場。最新ミニアルバムから表題曲「FAR」、そしてインディーズ時代の人気曲「センチメンタリズム」を淡々と自身のスタイル&ペースで披露。と思いきや、3曲を歌い終えた時点で何やら静かなる激情が彼女の内にどうしようもなく湧き上がってきてしまったようだ。そこからは思わず落涙する姿を見せた。彼女はこの一日目の「音都」にして誰よりも孤独だった。いや、しかし、その孤独を他でもない……音楽であり、ファンというかけがえのない存在が救い出し、魂の歌声を最後まで響かせ続けた。改めてその存在の大きさに彼女自身気付かされるステージになったのではないだろうか。アーティストのライブは予定調和的ではない、という事実を残して静かにステージを去った。
何やら不穏な空気感が会場に立ち込める。殺気立っているわけではない。が、そうこの日最後の二組は「甘い暴力」と「-真天地開闢集団-ジグザグ」。前回の「音都」でも強力なインパクトを残したDFTチーム唯一無二の二大ヴィジュアル系バンドだ。すでにこの二大バンドは、単独でも大バコのライブハウスを埋める動員力を誇っている。この時間を心待ちにしていたバンギャ集団の高揚が会場に蔓延していく。
まず先手を切ったのは、「甘い暴力」。前回同様、メッセージを殴り書きしたフラッグを運び入れ、いきなりぶちかましの1曲目「ハジメマシテ」。ボーカルの咲(サキ)が合図する「アタマ」「コブシ」「ミギ、ヒダリ」の掛け声に同調して振り付けするバンギャ軍団のフォ―メーションは激しく凄まじい。「うるせえ黙れ」と延々と繰り返すナンバーも暴力的だが、突如LEDに投影された映像には「性欲ウサギ」なる甘いのか、エロいのか、バイオレンスなのか分からぬシュールなキャラクターが登場して、混沌(=カオス)な世界。ところが、精神バランス崩壊寸前のところでその演奏力と楽曲メロディーの素晴らしさに心打たれてしまう。「ヒス症」「ぱねえっす。」「だいじょばない」「本能」と曲名は怪しげでも、そのスピリットに音楽で救われる甘美な魅力が備わっている。相変わらずのサディスティックな煽りの中に一粒の媚薬が混じり合って刺激的だった。
そして、初日10組のトリを務めたのは、「-真天地開闢集団-ジグザグ」。こちらは何と言っても白装束に身を包んだフロントマン、六代目の命(みこと)がバンドの象徴だ。巫女のような出で立ちで宗教的なイメージを醸し出しながら、サウンドは和の邦楽を感じさせつつヘビーロックでもあり、ダンス系もありとまさに和洋折衷スタイル。そこに天の声、命様のMC。これが時にやたら人間臭くユーモラスなのがたまらない! 髪を振り乱しモッシュし、狂喜乱舞するバンギャの姿は、まさに狂宴と呼ぶに相応しい。しかしながら、これも二回目ともなると段々にその状況が居心地よく楽しくなり、参加意欲をそそられてしまう中毒性があるのだ。今回は、演奏時間が割とコンパクトなため、彼らの単独禊(ライブ)のような数々の演出は見られなかったが、それでもこの日のイベントを締めくくるに十分な威厳を振りまいてくれた。
終演後MC、次は8/25(日)、場所をなんばHatchに移しての開催だと告げられる。
5時間に及ぶ「音都」無料ライブの攻勢はまだまだ続きそうである。
■3/31(日)「音都」二日目
一日目の「音都」は、初出場バンド系→常連組新人バンド→V系バンドといった流れでロックバンド勢が大挙出演した「ロックDAY」ともいえる内容だった。さて、二日目の「音都」は一体どんな内容になっていくのだろう。
昨日と同じ時刻にロビー開場、前日とは出演者も異なるためいくつものアーティスト・ブースが変わっていた。総出店数は21、その中にはダンス集団AZALIONのパフォーマンスあり、手裏剣投げやサルサ講座がありと、さらに多彩に。(ちなみに今回初導入のクレーンゲーム、これはかなり盛り上がっていた!)
さて、早速本題のライブ。二日目も定刻15時30分に開演した。今日も元気一杯なMei MeiのMCに導かれて登場は、三重県名張市出身ギタリスト、竹田NINJA京右。白衣の忍者姿で登場し、激しくも美しいギターソロプレイでオープニングを飾ってくれた。クラシックの名曲「ダッタン人の踊り」をロックアレンジで演奏するなど、新進気鋭のギタリストである。
続いては初登場、シンガーソングライター白石乃梨プロデュースのガールズグループ「TAN-SA・SUN(タンササ)」。全員10代からなる7名の女子グループは、TWICEのカバーから実力派ダンスパフォーマンス、さらに3年A組ダンスカバーと多彩なスタイルのダンスを次々と披露。白いブラウスにデニムで統一した彼女たちの切れ味溢れるパフォーマンスは新鮮だった。(先ほどの竹田NINJA京右もギター演奏で共演)
3番目に登場は、Jessy’s(ジェシーズ)。マルチ・プレイヤーでもありプロデュース能力も併せ持つJessyが、全国のオーディションで選りすぐった面々を集めて結成したダンス&ボーカルグループである。結成して僅かの期間しか経っていないのに、いきなりホールでのライブ・パフォーマンス! それ故まだまだグループとしてのパフォーマンスは発展途上を感じさせたが、個々のスキルではキラリと光らせる実力と個性を発揮していた。こういった新進グループがどうスキルを磨き上げていくのか、そういった経過を見極める上でも「音都」は機能し始めているのかもしれない。
続いて4組目は、こちらも「音都」初登場BARNZ(バーンズ)。ボーカルのKIKIと、ボーカル&キーボードの梅園ユウナからなる二人組ユニットだ。1曲目からショッキング・ブルーの1969年大ヒット曲「Venus」、続く「Black Night」はディープ・パープルの1970年ヒット曲のカバーと、往年の洋楽ファンが小躍りしそうな選曲。それもそのはず、彼女たちの演奏曲のコンセプトは“60~70年代ロック”。と来れば、これはまたリヴァイバル・カウンター・カルチャーの復権か。今回は様々なタイプの洋楽名曲カバーを披露してくれたが、近い将来、そのエッセンスを取り入れたオリジナル曲がどのように仕上げられ披露されるのか興味は尽きない。
そして、5組目も気になる初登場、B魔女B・B・A(ビーマジョ ビービーエー)。事前情報では、現在都内のジャズクラブで歌っているボーカリストの高原由妃を含む三人組の大人女子ボーカルグループと聞いていたが、いきなりセクシーなミニスカポリス風衣装で登場には驚かされた。そして披露されたナンバーは今も歌い継がれている1960年代〜1990年代のソウル・ミュージックの名曲のカバー。彼女たちもこれまでの「音都」では登場したことのないスタイルのグループなだけに、こちらも今後の動向が気になるニューフェイスだった。
ダンス、70年代ロック、70年代ソウルと新人グループが矢継ぎ早に登場して6組目は誰か?と思いきや、現れたのは森川七月。言わずと知れたGIZAのベテランジャズシンガーだ。「音都」のステージは初お披露目となる彼女が今回披露したのは、先の2グループの70年代志向の流れを汲んだのか、4曲全曲ともカーペンターズのカバー曲。森川のミドルボイスがカレン・カーペンターの歌声とリンクしてハマるのは当然であろう。「音都」の流れにしっとりと大人の時間枠を提供してくれた。
さて、中盤戦、ここからは再び新進新人グループの登場だ。
まず、7番目の登場はCROSS LORD。彼らもこれまでの「音都」にフル出演している20代前半の若き3人組。今日はオープニングから前回と少し趣向が変わっていた。まずはボーカル&ギターの基(もとき)がアコースティックギターを抱えて一人で登場。ひとくさり歌った後で、ギターの尚虎、ベースの歩夢が入ってきてサウンドに合流という演出は、なんだか基をポスト・エド・シーラン世代のアーティストのように見せて新鮮だ。そして、演奏も前回までは若いバンド特有の荒削りなロックスタイルを見せていたのだが、今日の彼らはそれだけでは割り切れない細やかなサウンドアレンジを楽曲に施し、よりアーティスティックな世界観を表現していた。以前と同じ楽曲でも英語と日本語の使用比率が変わったようにも聞こえるし、よりモダンなバンドへと変貌していく姿を感じさせる。無国籍、ボーダーレスな音楽性を纏ったバンド、これからのバンドサウンドの主流はかくあるべきなのかもしれない。
8番目に登場は、magenta blue(マジェンタ・ブルー)。彼らもダンサブルなシティーポップを信条としていたが、今回はさらにそのポテンシャル・アップ。四人のコンビネーションも強固になった上で、より音楽性はダンサブルにポップにスタイリッシュに変化。エスタブリッシュな世界観を推し進め、全世界配信となった新曲披露も含め、モダンなバンドサウンドを表現していた。
続いて9番手に登場した初登場のMaica_n(マイカ)は、超一流ミュージシャンのサポートに支えられて数々のオリジナル曲を披露。若干18歳の作品とは思えない完成度に驚かされた。そのあどけなく飄々とした風貌とは裏腹に、大気の器を感じさせる恐るべき10代の実力派シンガーソングライターだった。6月初旬にはタワーレコードインディーズレーベル「HERE,PLAY POP!」よりミニアルバム発売決定のインフォメーションもあり、今後の活躍から目が離せそうにない!
同世代と言っても次に登場した10組目のSARD UNDERGROUND(サード・アンダーグラウンド)は、Maica_nとはまた正反対の個性をアピール。Maica_nが本格派だとしたら、こちらは正統派であろう。こちらも「音都」初登場! 彼女たちはボーカルの神野友亜を中心とした4人組ガールズバンドで、披露した楽曲は「マイ フレンド」「負けないで」をはじめ、全てZARDのナンバーという正真正銘のトリビュートバンドだ。3月3日に臨んだ1stワンマンに続く2回目のステージとなった今回、みずみずしくピュアでありながらも、内に秘めた強い意志と覚悟、さらに煌めきを放つ存在感たっぷりのステージングに心を奪われた。
一日目のロック勢とは変わって、二日目はダンスあり、70年代風R&Bあり、ポップあり、トリビュートありと多彩な展開を見せる中、この日のラスト二組は、DFT(=堂島フォーラムチーム)の中でもGIZAを代表するべテラン・グループの登場だ。
トリ前、11組目はメジャーデビュー10周年を迎えたChicago Poodle。ボーカル&ピアノの花沢耕太を中心としたピアノロックトリオは「音都」初登場。だが、さすがにライブは手慣れたもので、1曲目からオーディエンスに手拍子で参加させたり、バラードあり、ノせる曲あり、自らの代表曲を駆使して緩急溢れる展開、わずか25分間の持ち時間でベストな選曲とベストな盛り上げ方でオーディエンスを湧かせた。
そして、トリに登場のdoa。本日はプロレーシングドライバーでもある吉本大樹(Vo.)は不在で、徳永暁人(Vo.&Ba.)、大田紳一郎(Vo.&Gt.)の2人での出演だったが、その安定のプロフェッショナルな演奏力とコーラスワークは健在。カラッとしたWest Coast Soundにこの季節らしいバラード、最後にノリノリにさせるナンバーへ。彼らも今年でデビュー15周年、ホールクラスの観客全員を巻き込む魅力を熟知した大人のロックバンドたる余裕と貫禄のステージングだった。
二日間、両日ともに5時間強を誇った今回の「音都」Vol.4 。総勢23組、デビュー前の新人組みあり、連続出演組あり、べテラン勢あり、音楽性も、ロック、R&B、70’s、トリビュート、ダンス、ポップと幅広く百花繚乱の様相を呈して閉幕したこのイベントもいよいよ本格的に大阪=関西の音楽シーンの中核をなす存在になりつつあるようだ。これだけの質&量を見せつけられると、日本の音楽シーンの未来は明るいと期待を抱かずにはいられない。
次回の「音都」は場所を変更して8月、さらに11月には再び堂島で2DAYSが行われることも発表された。2019年、新しい年号と共に、新しいアーティスト勢力の胎動がいよいよ音楽シーンを巻き込んで大きく生まれ変わろうとしている。(TEXT BY 斉田才)
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DFT presents 音都(ON TO)~NEO ROCK from KANSAI~
DFT(=DOJIMA FORUM TEAM)としては今年4度目、音都(ON TO)としては今年3回目となる DFT presents「音都~NEO ROCK from KANSAI~」。11/17(土)堂島リバーフォーラムにて開催された。
ライブレポート 2018/11/17(土)
風は西から吹いてくる~音楽シーンの流れを西から変えていくというコンセプトのもと、本年度から開始されたこの無料ライブイベントもいよいよ定着してきたか。前回までの「音都」では、新人バンドを中心とした5組が出演していたが、今回は一挙10組に拡大。しかも新人バンドのみならず、植田真梨恵やSensation、さらにジグザグ、甘い暴力のV系バンドも参戦しての開催、DFTがまさにチームたらんとする様相を呈してきた。
会場に足を運んでみるとすでに周囲は長蛇の列。ロビー開場13時半、開演15時半という早い時間帯の開催にもかかわらず、前回以上の規模でオーディエンスが集結していた。
会場内は、入口中央に出演アーティストの巨大直筆サイン入り写真パネル(タペストリー)が並べられていて撮影出来るようになっている。2Fでは以前までのライブ写真も展示されていた。そして、あらかじめARTIST BOOTHと告知されていたロビーだが、実はかなり興味深いものだった。ロビー開場と開演までのブランクが2時間もあるのは、まぁそこで物販でもするからだろう、とタカをくくっていたら然にあらず。アーティストごとに区切られた場所では、PHOTO SPOT、おみくじ、射的、ガラガラ、似顔絵、ガチャガチャetc …と各アーティストごとに趣向が凝らされ、まるで露店が並んでいるような風情、さらにネイルカラー・アレンジ、ポールダンス、クッキーまで販売している。その上、なんとその各ブースに本日の出演アーティストが直々に出向いてお客さんにサービスするというおもてなしぶり。また、奥のブースには小さなライブスペースがあり、そこでも本番前からミニライブが行われていた。しかもミニライブの内容がこれまた豪華だ。TANKTOP SATURDAY SUNDAYというダンス系新人女子チームが出たかと思えば、メジャーデビューしたばかりのギタリスト竹田NINJA京右。そして、大田紳一郎(from doa)、Chicago Poodle、ジャズの森川七月、BOOWYのトリビュートバンドGARL(ガール)、さらにサプライズで植田真梨恵と様々なアーティストが入れ替わり立ち替わり演奏していたのだ。
そんな内容だから、ロビー開場時からお客さんが集まっているのも当然。無料ライブだからといってお目当てのアーティストのライブだけ見てそれでお終いにはさせないような工夫が随所に凝らされている。それも「音都」というイベントのカラーになりつつあるようだ。
そんな内容も実ってか、前回以上の集客につきホール開場時間が前倒しになったのは主催者側にとっては朗報だろう。
そして、定刻の15:30、予定通りイベント・スタート。オープニングMCは15歳のバイリンガル女子Mei Mei (メイメイ)。流暢な英語でのアナウンス、その後にもうお馴染みとなってきた「音都」のコンセプトイメージ映像が流れ、注目はステージへ。
トップに登場は前回同様 magenta blue(マジェンタ・ブルー)。スタイリッシュな出で立ちで現れたメンバーは、前回よりもバンドらしさが加わり、さらにモダンで未来志向のポップバンドへと変貌していた。ロック、R&B、エレクトロを巧みに消化しながらそれでいてEW&Fや70年代ディスコサウンドにも通じるテイストがあり音楽性の幅を広げた印象。またヴォーカルの松山大徒がオーディエンスに積極的に働きかけ、KEIのギター・カッティングもより洗練さが増し、グルーヴ感溢れるバンド・サウンドでオーディエンスの視線を集めていた。
続いて登場は、RICO KUSUDA with Sensation。Sensationは言わずと知れたGIZA系サポートミュージシャンの主砲、B’z、ZARD、倉木麻衣、森川七月ほか、そうそうたるアーティストをサポートしているだけあってその演奏能力は申し分ない。その4人組がまずは自らのインストゥルメンタルナンバーを1曲披露、続いて初出演のRICO KUSUDAは漆黒の衣装でエレガントに登場。ところが、彼女は若干まだ20歳、衆目の中、聴かせた歌声は堂々としていてその力量を窺わせた。もちろんまだ多少の硬さは残るものの、そのポテンシャルには、ビッグ・ブラザー&ホールディングカンパニーに参加していた若かりし頃のジャニス・ジョプリンを思わせる可能性を感じさせた。彼女が今後百戦錬磨のSensationとどんなサウンドを構築していくのか、興味深い組み合わせだった。
サンタナの「Black Magic Woman」で手際よく転換した3組目に登場したのはCROSS LORD(クロスロード)。彼らもまた平均年齢21歳の若い3人組だ。オープニングから、ヴォーカルの基(もとき)の静かな歌声を響かせて始まるあたり、3回目の「音都」登場で大分自らの立ち位置を掴んできている様子。特に今回は基の歌声を生かす選曲に徹していて、ギターの尚虎もベースの歩夢も落ち着いた演奏でバンドの「静」と「動」をうまくコントロールしていた。彼らの持ち味は、王道UKロックの静謐感と激しさをミクスチャーしたサウンドにあるのかもしれない。わずか1年にして一皮向けた手応えを感じさせていた。
4組目は、初登場、図画アニソンメタルバンド。何やら覆面姿の楽器隊、ミニスカポリス姿のコーラス娘やらが登場して騒々しい。ところが、Deep Purple「Black night」の転換演奏を聴いただけで「お、なんかスゴいぞ」と思わせるその演奏力の確かさ。一体何者なんだこのバンド?
そんな疑問の最中、フェティッシュな衣装に身を包んだ謎の美女が登場、その妖艶さについ目が奪われたが、歌い出したのはなんとアニメ「スラムダンク」の名エンディング曲「世界が終るまでは…」。しかもこれを余裕の声量で歌いきり、続く「ムーンライト伝説」では(まさにこのバンド、そのバンド名通りアニメソングをメタル色で歌うバンドだった)歌い出し一番、ヘビーメタル直伝のハイトーン・ヴォイス、雄叫び、いや女叫びで圧倒。しかもこのバンド陣、特にツインリードギターの2人の掛け合いは超絶技巧にしてBABYMETALの好敵手出現か!?と思わせた。いや、これはビーイング40年の歴史上から推測すればHRの名称ジャパメタの一時代を築いた浜田麻里、もしくはB.B.QUEENSのコンセプトの延長か?そうなのだ、何故ならばその後ZARD「運命のルーレット廻して」と「名探偵コナン」のテーマソング小松未歩「謎」(この曲ではゲストにギタリスト竹田NINJA京右も参戦)を披露、実力派のミュージシャンが遊び心をもって楽曲を演奏するのは、まさにビーイング流・図画工作の世界。そういえば圧巻の歌声を聴かせた女性ヴォーカルの名前は図画泉美(笑)。大化けしそうな新人バンドの登場だ。(その後、ツイッターによりオペラ座の怪人風覆面ギタリストはdpsの森丘直樹だと判明、そりゃ上手いわけだ)
5番目に登場したのは唯一のガールズバンド、砂糖ココアとHinawa銃。このバンドもスイートな名前の女性ヴォーカルと彼女の出身地、種子島の鉄砲伝来の由来からHinawa銃と名付けられたコンセプチュアルなバンド名。しかも全員が正統派美女&演奏能力もピカイチ。「音都」3度目の出演ともなればその堂々たる立ち居振る舞いにも納得。ただ可愛いアイドルバンドとは一線を画する、毒のある女の世界を描き切ったそのサウンドにはさらに磨きがかかり、柔和な男子たちを震え上がらせていた。海賊(パイレーツ)姿で彼女たちが歌い描く世界は、彼氏が浮気をしたので浮気相手の彼女とつけていたペアウォッチをぶっ壊す「あなたの腕時計」、ストーカー女子を可愛く演じた「ついて行くわどこまでも」などヒッチコックも真っ青なホラー&心理バイオレンスの世界。唯我独尊でこのまま突っ走って行くのだろうか。
折り返して6番目の登場は、メジャーデビューから1年、前回の「音都」ではトリを務めた京都出身の6人組Qyoto(キョウト)。貴公子然たるスーツ姿の若きジェントルマン。このアイドル然としたルックスから繰り出される極上のポップ・ミュージックが彼らの身上、いきなり2ndシングル曲「It’s all in the game」に収録されている「君と僕とアクロス・ザ・ユニバース」から始まり、続いてリリース前の3rdシングル曲「真冬のダイアリー」は関西初披露、デビュー曲「太陽もひとりぼっち」と出し惜しみなく立て続けに演奏して行く様は潔く清々しくもある。初期ビートルズのようにヒット曲を量産して行くポップロック・バンドの輝きがこの1年を通してさらに磨きがかかったことを証明する華やかなライブだった。
続いては、つい11/7にメジャデビューしたばかりの4人組dps(ディー・ピー・エス)。この日のdpsはメジャーデビュー効果があるとするならばそれこそこれだ!という圧巻のパフォーマンスを見せつけた。1曲目からデビューシングル曲「タイムライン」でオーディエンスを掴み、そのまま怒涛のスピーディーなナンバーで畳み掛ける。特に成長著しい20歳のヴォーカリスト木村涼介の堂々たるパフォーマンス、ギタリスト森丘直樹の超絶早弾き、安井剛志の破壊的ベース、川村篤史の豪快なドラミングと個が引き立ちながら一体感を増したハードロックサウンドは、これがメジャーロックの王道だ、という自信に満ち溢れていた。Qyotoがビートルズならdpsはレッド・ツェッペリンだ、なんてスケールのデカい想像力を掻き立てるバンド、これからの進撃に期待したい。
轟音の熱量をクールダウンさせて優しげな歌声の曲で転換して登場したのは「音都」初登場のシンガーソングライター植田真梨恵。とはいえ、彼女はもうインディーズデビューから10年、メジャーデビューしてからも5年目と活動歴は10年に及び、そのキャリアは長い。
真っ白なワンピース姿で登場した植田、オープニングはアコースティックギターの弾き語りスタイルでインディース時代の名曲「壊して」から。途中からこれもまた白服で統一したバンドメンバーの演奏が入ってくる。のだが、彼女の場合どんな演奏スタイルでも(ソロ弾き語り、ピアノと2人でもバンド形態でも)やはり、耳に入ってくるのは圧倒的に存在感のある歌声、それに尽きる。この日はインディーズ時代の曲もメジャーになってからの曲も最新シングル曲も披露したのだが、一貫してこの10年間の植田真梨恵の音楽世界はブレていないのが伝わってくる。そうなのだ、どんな会場であってもどんなお客さんの前でもどんな共演者と一緒であっても、植田真梨恵は植田真梨恵でしかありえない。彼女が表現する純粋無垢、まっさらでまっ白な音楽を表現した唯一無二のステージングだった。
唯一無二といえば、ここ数年のGIZAの新しい波とも言えるV系バンドの流れがある。ビジュアル系と称されるその異彩な音楽ジャンルの中で頭角を現している2組が「音都」初登場にしてトリ前とトリで登場、それが「-真天地開闢集団-(しんてんちかいびゃくしゅうだん)ジグザグ」と「甘い暴力」だ。
この二つのバンドにはすでに数百人規模でバンギャと呼ばれる強力なファンが付いている。そのV系バンドとバンギャの「絆」が、この「音都」という無料ライブイベントをどう響かせ共振して行くのか?
トリ前9番目に登場は「-真天地開闢集団-ジグザグ」。
何やらステージには4本ののぼりが立てられ、さながら戦国期の様相、そこから異様なSEに導かれて和装の異人が舞い降りた。センターのヴォーカル、命(みこと)はまるで祈祷師のような出で立ちだ。すでに堂島リバーフォーラムはジグザグという何者かに世界を占拠されたのだ。続々と会場前方にバンギャたちが集結している。そこで繰り広げられる光景は1曲目からもはや阿鼻叫喚の世界、激しい演奏ごとにふり乱される髪、一斉に繰り広げられる手技ポーズ、モッシュ、その統制のとれたフォーメーション。演奏は複雑かつスキルは高く、メロディーはポップだがラウドでヘビー、時にコミカルでもあるという硬軟交えた構成、それに命(みこと)の絶妙なMCで振り付け指導まで入るというサービス精神、エンターテインメント世界は、日頃のうっぷんを忘れさせるのに十分過ぎて刺激的だ。除霊あり、ハラ切りありの演出が和風メロディーとラウドロックの狭間で息つくヒマもなく終盤まで続いていく。彼らのライブは禊(みそぎ)と呼ばれるそうだが、まさにジグザグは「愚かな者に、救いの手を」差し伸べ、日々の憂さや不浄を晴らす儀式を執り行う神主集団なのだった。
そして今回、5時間という長丁場の「音都」トリを飾ったのは「甘い暴力」。すでにV系の世界ではそのライブ・パフォーマンスが話題沸騰中の4人組だ。「音都」初登場の彼らもステージ上の見栄えにこだわる。上手に「嫉妬」下手に「依存」という巨大な文字立て看板を掲げてバンドの存在感をアピール。のっけから4人が飛び出せば、まさにそこは文字通り甘く暴力的な世界だった。「ヒス症」「調教してください」「都合のいい女」何とも字面からも危険な香りのする楽曲がブンブン繰り出される。メロディーは甘くサウンドは破壊的なまでに暴力的、ヴォーカルの咲(さき)はドヤ顔ならぬオラオラ系ドヤ声でバンギャたちを扇動、その声に従って上下に首振り、右左に移動、中指まで立てるという恐ろしい展開をするバンギャ軍団。先ほどのジグザグが儀式であるならば、こちらは秘密結社が主催する乱れたパーティーだ。言葉で蹂躙(じゅうりん)され、カタルシス(恍惚感)を得るSMチックな演者&バンギャのやりとりは視床下部に響くパンクな衝動だ。綺麗事ではない炎上上等の「うるせえ黙れ」な世界は、ありったけのパワーを爆発させた芸術だった。
最後に咲(サキ)が叫んだ。「これがビジュアル系だ」その一言が、ロックの本質だった。
そうだ、このイベントこそロックそのものなのだ。サウンドもビジュアルもエンターテインメントもDIYな精神も、全ては日本の音楽シーンに新しい風を吹かせるためにある。
「音都 ~NEO ROCK from KANSAI~」
次回の開催は、2019年、3月30日、31日の2日間、ここ堂島リバーフォーラムにて。いよいよ風向きは強く、激しく、そして急を告げて東へ向かうのだろう。次回を待て。
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DFT presents「音都 ~NEO ROCK from KANSAI~」
6月17日に行われた「DFT presents 関西ネオロック ~お好み音楽焼き大演会~」から3ヶ月、DFT(=DOJIMA FORUM TEAM)が送る、無料ライブイベント第二弾DFT presents「音都 ~NEO ROCK from KANSAI~」が9月17日(月祝)に開催された。
ライブレポート 2018/9/17(月)
前回のライブ終了時に予告されていた啓示的な宣言、音都 ~NEO ROCK from KANSAI~
「風は西から吹いてくる 空気は西から変わり始める」
その変化をより加速させるべく、オープニングはいきなり「音都」大阪のイメージ映像が流された。
大阪は、音の都となる=「音都」、そのシーンを牽引するのはDFT(= DOJIMA FORUM TEAM)だ、という決意を引っさげて、この日登場したのはQyoto(キョウト)、dps(ディー・ピー・エス)、砂糖ココアとHinawa銃(サトウココアトヒナワジュウ)、CROSS LORD(クロスロード)、そして新鋭magenta blue(マジェンタ・ブルー)の5組。
まず登場したのは、初出演magenta blue。松山大徒(Vo)とKEI(G)を中心に結成された4人が奏でたサウンドは、流行のエレクトロ・ダンス・ポップ。マルーン5、ザ・チェインスモーカーズに通ずるダンサブルでポップなスタイルが、先進のロックバンドのフィールを醸し出す。「Distance」「タイムマシン」とブラックアイドソウル的な要素や松山のエフェクトをかけたファルセットボイスの使用も斬新、さらに「Baby And I love you」ではEDM的な要素も。4曲でステージを後にしたが、クールで新しいスタイルのロックの可能性を感じさせるバンドだった。
続いては、平均年齢20歳のトリオバンドCROSS LORD。前回の初出演時には始めから激しいロックサウンドをかき鳴らしていたが、今回のオープニングでは、Voの基が軽快にギタレレを抱えて登場。明るくカリビアンな新曲「SAVANNA」を披露。サビで「サバンナ!」と力強く歌うシーンが印象的だ。2曲目の「Banana Shake」も新曲、かつ新境地を開くナンバー。また、「Where is My Cellphone」はよりブラックなフィーリング、ライブ定番曲でもある「Taking Pain」「Merry-Go—Round」もただ激しいだけではない洗練さが加わり、バンドとして一回り大きくなった演奏を聴かせてくれた。たった3ヶ月にして成長度著しい姿を見せたCROSS LORD、各楽曲のメロディーもキャッチーなだけに今後新進バンドの「台風の目」となる可能性大だ。
CROSS LORDから、転換はサンタナ「ブラック・マジック・ウーマン」のフレーズをなぞりながらメンバーが入れ替わっていく。3番手はこちらも2回目の出演、砂糖ココアとHinawa銃。パイレーツ姿のメンバーの衣装も雄壮な出で立ち、1曲目はドラマティックな「Burning the soul」。砂糖ココアの情熱的なヴォーカルが印象的なナンバーだ。「私たちは、女性ならではの心情を歌うガールズバンドです」と宣言、大好きだった彼氏が浮気をして浮気相手の彼女としていたペアウォッチをぶっ壊す「あなたの腕時計」の歌詞の衝撃度の凄まじさ。不穏な空気感のまま「浮気をするのなら彼女より可愛くて 美人でスタイルのいい子にしなよ」へ。勢いよくドクロの旗が振りかざされ、力強いフレーズが響く。さらに可愛らしい歌詞と演奏ながら、内実はストーカーを歌うというグロテクスなイノセンスを表現した「ついて行くわどこまでも」、ヘビーメタルとオペラが融合したような「オンナの世界」のおどろおどろしき重厚サウンド、前回よりさらにパワーアップしたガールズバンドの真骨頂を見せてくれた。演劇的演出もさらに深化し、さながら新世紀の「ダークサイド・オブ・ザ・プリンセス」の称号は彼女らのためにあるようだ。新加入の女性ドラマーの貢献度も必見だ。
そして、「Bring It On Home To Me」のフレーズ回しから転換、4番目に登場はつい先日メジャーデビューが発表されたばかり、ネオ・ハードロックバンドの雄、dps。
前回は、ギタリストの森丘直樹不在だったが今回から復帰、サポートギタリスト&キーボードを加えての6人編成で登場。真っ黒なコート姿で颯爽と登場したヴォーカル木村涼介。「堂島—!!」という煽りから激しく始まった「さよなら愛しい日々よ」、続く「Dive into the Stage」の衝撃度。激しい川村篤史のドラミングに野太い安井剛志のベースが絡み、畳みかける森丘のヘビー・ディストーションギターリフ。ハイボルテージな演奏の中で繰り広げられるアクロバティックな超高速ギターソロの妙技が、スゴい。dpsの強みは、ハードなサウンドでありながらメロディーはキャッチー、特にサビメロディーの耳馴染みの良さは特筆もの。「いっそ全部ぶっ壊して、真っ逆さまに落ちていって」「オレンジみたいな昼下がり」も一度聴いたら覚えて歌えてしまう魅力がある。そして、いち早く11/7にリリースされるメジャーデビュー曲「タイムライン」も披露。この曲、切り込むギターリフから、早口のラップみたいな歌い出し、サビの美メロとなかなか吸引力抜群なのだ。最後は、こちらもdpsアンセム曲となる「一発逆転」。サポートキーボードがドラムに加わり、ダブルドラムで繰り広げられた圧巻の迫力、いよいよロックのDNAを継承するニュージェネレーション・バンドの誕生、dpsの時代到来か!?を印象付けた。
ジャズの名曲「Take Five」から転換していったのはQyoto、サックスRYOTA.とヴァイオリンHIROKIがソロを奏でていたのが印象的だった。
ヴォーカル中園勇樹が自信たっぷりで歌い出した1曲目は2ndシングル曲「It’s all in the game」。Qyotoならではの華やかさを感じさせるJ-POPソング。さらに続けてデビューシングル曲「太陽もひとりぼっち」を惜しげも無く披露してくるのはバンドの余裕の表れか。確かに今時ブリティッシュトラッドスーツを着こなして登場するバンドも珍しいが、それが堂に入っていて会場の堂島リバーフォーラムのイメージにフィットしている。
甘く軽くスウィングしている「I’m a looser」も最終曲「君と僕とアクロス・ザ・ユニバース」にしても、Qyotoはあくまで真っ当なJ-POPを直球勝負で追求するロックバンドだ、ということを裏づけたライブだった。
それにしてもだ、前回からたった3ヶ月間でバンドというものはこんなにも進歩するものだろうか。Qyoto、dps、砂糖ココアとHinawa銃、CROSS LORD、どれもがバンド力も技術力もヴォーカルもライブ・パフォーマンス、モチベーション、ポテンシャル全てが上向きに突っ走っているのは驚きだった。
ライブ終了後は、今回もMC車谷(そして新人メイメイ)が登場、次回は11/17(土)3度目のDFT「音都 ~NEO ROCK from KANSAI~」の開催を宣言。出演者は、Qyoto、dpsのレギュラー陣に加え、-真天地開闢集団- ジグザグ、甘い暴力のV系バンド2組、そして植田真梨恵のベテラン勢も参加、さらにまだ出演者が増えるという。しかも、なんと次回もこの内容で無料イベントなのだ!
一体どこまで本気を出すのかDFT、関西からのロックの波はもはや胎動では済まされない。来たるべき次の世紀、世代への新たなる足がかりだ。
地震に台風、天変地異が数多く発生、関西&日本列島を襲った2018年、音楽シーンの地殻(=知覚)変動ももはや止められないところまで来ているに違いない。
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大阪から新世代ロックの熱波襲来!
2018年6月17日、大阪・堂島リバーフォーラムにてライブイベント「DFT presents 関西ネオロック~お好み音楽焼き大演会~」が開催された。DFT(= Dojima Forum Team)とは、多目的ホール「堂島リバーフォーラム」を拠点に、ここから新しい関西の音楽ムーブメントを立ち上げようとするチームの総称である。登場したのは、Qyoto(キョウト)、砂糖ココアとHinawa銃(サトウココアトヒナワジュウ)、dps(ディーピーエス)、CROSS LORD(クロスロード)の4組のロックバンド。いずれも20代前半のメンバーを中心とした新進気鋭のバンド達。知名度こそまだまだだが、その実力を知らしめようと、この無料ライブに挑戦した。
「関西ネオロック~お好み音楽焼き大演会~」ライブレポート
開演前からキャパシティー1,000名を越す堂島リバーフォーラムに相当のオーディエンスが集まっていた。スクリーンには白色のDFTのロゴ・マーク。四つ打ちのSEに乗って登場したのはMC担当、車谷啓介(from Sensation/彼はサポート・ドラマーとしてCROSS LORDと砂糖ココアとHinawa銃に参加)音楽愛に溢れたMCで今回のイベントの主旨を紹介。関西の新しいロック・イベントの始まりを宣言した。
トップバッターは、平均年齢20歳の次世代ロックバンドCROSS LORD。『Walk across』に乗せてゆっくりと登場したかと思いきや『Talking Pain』のイントロリフから極上のスピードで畳みかけるようにオーディエンスを煽っていく。幅広いジャンルを吸収したサウンドとグッドメロディーに次世代に刺さる詞世界、そしてギターボーカル Motokiの声を武器に今後のミュージックシーンに宣戦布告する様は今後の活躍が非常に楽しみになるバンドだ。
続いての登場は、70年代ロックの流れを感じさせる4人組、dps(ディーピーエス)。いきなりハードに攻める『暇つぶしみたいな人生』、派手なギターカッティングから繰り出すイキのいいナンバー『いっそ全部ぶっ壊して、真っ逆さまに落ちていって』、さらにリズム隊が暴れまくる『世界を斜めから見て』。1st EPからの代表曲『一発逆転』。続くスピーディーな『ホワイトアウト』の破壊力、そしてラストはローリング・ストーンズばりのギターリフが印象的な『オレンジみたいな昼下がり』。まさに70年代ハードロックの王道を貫いている本物のバンドサウンドを聞かせてくれた。
サンタナ『Black Magic Woman』のイントロで登場したのは、砂糖ココアとHinawa銃。80年代ガールズロックバンドの再来を彷彿させる哀愁のメロディー、そしてその甘い名前とは裏腹な砂糖ココアの力強い歌声が魅力のロックバンド。バンド名の由来は彼女の出身地、種子島が鉄砲由来の地であることから“Hinawa銃”と命名したのだそう。「浮気撲滅」と書かれたフラッグを颯爽と振り回し、「浮気をした彼氏が浮気相手とペアウォッチをしていたのでそれをぶっ壊す曲」として「今日あなたが大事にしてる腕時計壊しました ざまあみろ」という過激フレーズを繰り返す『あなたの腕時計』。さらに『オンナの世界』ではドロドロした情念を予測不能なメロディーのボーカルで聞かせた。ポップだがツンデレな楽曲群が孤高の存在を際立たせている。そのビター&スウィートな世界観は、クセになりそうな新しいガールズロックの地平を切り開いていた。
ラストに登場したのは京都出身の現役大学生が中心となって結成されたQyoto(キョウト)。シャープなブリティッシュトラッドのスーツをまとって登場した6人の姿がまぶしい。
HIROKIのバイオリンから始まったオープニングはデビュー曲『太陽もひとりぼっち』。爽やかかつメロディアスかつドラマティックと三拍子揃ったキャッチーなナンバー。続く『君と僕とアクロス・ザ・ユニバース』もつい口ずさみたくなる美メロ満載、これぞJ-POPバンドの花形。『My Diamond』は胸が熱くなるバラード。アニメ「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」の オープニング・テーマ曲は、7/11リリースの2nd シングル『It’s all in the game』。彼らはJ-POPかくあるべきを王道でいく新世代のメジャーバンドとしてその評価を高めていくだろう。
全ライブが終了し、再びMC車谷が登場、締めくくりにさらに次なる一手を公開。
なんと、9/17(月祝)敬老の日、堂島リバーフォーラムにて再びこの無料ライブイベントが行われるそうだ。
タイトルは、DFT presents 音都 ON TO ~NEO ROCK from KANSAI~。
まだまだ、ここから新しい何かが始まる、そんな予感を感じさせたライブだった。